30周年を迎えるにあたって想うこと


30周年ってなんだ?実は、我が母校(筑波大学)の設立30周年の記念誌に投稿した内容です。文字制限がありかなり長くなっていますが、興味があったら呼んで下さい!


今、大学病院の産婦人科がかかえる問題を如実にあらわしています。


一応どんなマスコミよりも芯を食った話です。


開業医として


私は筑波大学第19回生として、久保前教授、角田助教授に半ばそそのかされる形で筑波大学産婦人科に入局しました。現在、縁あって千葉県のはずれの館山市産婦人科有床診療所(ファミール産院)を開業しています。


今、産婦人科業界は存亡の危機になっていることは今更いうまでもありません。実際、産婦人科医不足で直接被害を被っているのは、我々20〜30代の産婦人科医師ではないでしょうか?このまま団塊の世代産婦人科医が引退し、我々の下の世代の入局者が増えないと、我々は今の生活をあと30年続けなくてはなりません。


やはり、”筑波大学産婦人科医局の次の30年”を考えると、入局者をどれだけ増やすことができるかということに尽きると思います。


茨城県を離れてみてはじめて気づきましたが、様々な機会で出身大学や医局を聞かれます。いわゆる同門の関係というのは、初対面の先生になんともいえない親近感を持ち、いつのまにか相談相手になってもらえる関係になってしまうものです。残念ながら、館山市にはそのような先生はいませんが・・・。


こういう同門という考え方が古いとか、これだから医学は閉鎖的だと言われそうですが、見知らぬ土地では、同郷だとか、同門だったりするだけで仲良くなれるきっかけになることは、それこそ人間の本質だと思います。


ぜひとも、大学病院、研修施設の先生方には、新規入局者の獲得をお願いしたいというのが私の本音であります。


それでは、どうしたら同門の若手産婦人科医が増えるか?


これは筑波大学産婦人科医局そのものが魅力のあるものになるしかありません。残念ながら今の世の中は、研修医に医局を選ぶ権利があり、医局側は選んでもらう立場です。選択権は研修医にある以上、彼らがこの医局の仲間と一緒に仕事をしたいと思えるような環境を作るしかありません。これは、完全に資本主義の競争社会の論理です。


診療所の経営者という立場で言わせていただくと、ファミール産院の従業員の新規募集をかけたときに、助産師おろか看護師すら引っかからない時がありました。なにしろ知名度もなにもあったもんじゃあありませんでしたから・・・。


雇われる立場で考えてみれば、ファミール産院というのは、いったいどんなところかしら?院長がお若いようだけど大丈夫かしら?など不安がつきないことでしょう。そこで、当院をよく知ってもらうように、ホームページを作成し、院長、スタッフ、厨房日記なるものをつくり、連日更新するよう努力してきました。そのかいあってかどうかわかりませんが、今度はホームページからスタッフの募集はないのかという問い合わせがくるようになりました。


もちろん、医師の獲得と従業員の獲得では次元が違うことは重々承知です。ここで私がいいたいのは、”医局員獲得のためには、いかに効率よく、自分たちの組織のいいところを産婦人科に興味のある研修医に知ってもらうか。”ということです。組織の本当の良さを知るのは、何年もかかるものです。でも、
組織に入らなければそのよさは絶対にわかりません。若い医師は、この先の医療に対してかなり敏感です。診療科の将来性、大学の将来性を昔に比べて冷静に見ています。


レジデントの皆様には、”身内の悪口を言う前に、身内を増やす努力をしなさい。身内が増えればそのうち悪口も減ってきますよ。”


といいたい今日この頃です。


私自身は、10年ほど前にそそのかされて入局したことを後悔するかどうかは今後の自分の活躍にかかっているかと思います。弱冠30代で産婦人科開業をしてしまった以上、この道でトップになれるようがんばりたいと思います。


今日の一言
 「30周年ってなんだ?どんなマスコミよりも芯を食った話です」