擬娩(ぎべん)


読売新聞に載っていましたが、どうやら擬娩(ぎべん)ということばがあるようです。


擬娩とは、妻の出産の際にその夫も床についたり、時には苦しんだりして、いろいろな禁忌に従う習俗のようです。


擬娩の習俗はヨーロッパでは歴史的に古くから存在し、イベリア半島において「女たちが子供を産んだときに、その夫を床に就かせてこれを養う」とかフランスの古い言い回しには「妻が産褥に就いたときに夫は床に入る」ということがあるようです。また、スコットランドアイルランドでは、さらに積極的に、夫が苦しめば苦しむほど妻は妊娠や分娩の苦痛から解放されると言われてきたといいます。


西インド諸島のカリブ族では、子供が生まれると、その母はまもなく働き始めるが、今度はその父がうめき始めてハンモックに横になり、人々から見舞いを受けるようです。そして妻の出産後半年にわたって、夫が食べる動物性食物(魚、海亀、海牛など)はさまざまな理由で子供に障害を生じると信じて口にしないそうです。


日本でも出産は‘産の忌み’とされ、産婦の夫は神事、狩猟や魚撈などに参加することを禁じられていました。また九州の離島では出産があると共同体全体が忌みにこもり、その日は野外に出ることを禁止したといいます。


擬娩が何のために存在するのかよくわかりませんが、それだけ出産は大変なものであり、産婦さんひとりで苦しむものではなく、夫、はたまた出産にかかわる共同体が、子孫繁栄のために行うものなのかな?と思いました。


当院では、夫が立会い出産をしているそばで、親戚中が集まり、まだかまだかとそわそわしている光景を良く見ます。陣痛の苦しみを夫が妻の手をとって分かち合い、一緒になって力を込めていることも広義の擬娩なのかと思いました。


今日の一言
 「擬娩(ぎべん)ということばがあるようです」